モブ子は今日も青春中!

俺様 ③


 兄ちゃんが蓮見くんから私の自転車を受け取る。

「母さんが心配だから見てこいって。何度も電話したんだよ、かなめ。」

 鞄の中を確認。本当だ。着信がたくさん入っている。

「ごめん、英語の補習で残ってて。」

 必死だったとは言え、メールくらい送れば良かったと反省する。


「君がかなめを送ってくれたの?…えっと、ごめん。」

「蓮見です。」

 朗らかに微笑む兄ちゃんと、不敵な笑みを向ける蓮見くん。

 いや、不敵な笑みではないんだろうけど、そう見えてしまうのだ、彼が笑うと。さすが俺様キャラ。 

「ありがとう。かなめを送ってくれて。」

 兄ちゃんが、兄ちゃんらしいことを言う。兄ちゃんにはいつも心配をかけてばかりだ。

「いや、大丈夫です。じゃあな、かなめ。」

「あ、うん。」

 私に目配せをすると、蓮見くんは大通りの方に去って行った。スマホを耳に当てていたから、本当にタクシーを呼んでいるのかもしれない。
 お金、勿体無いな…悪いことしたな。
 離れていく蓮見くんの背中を見て、庶民のモブはどうしてもそんなことばかり考えてしまうのだった。

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