懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました


いないのかな……。

ためしにもう一度押してみても、やはり同じだった。

土曜日の今日、仕事の予定は入っていなかった。
そうとはいえ忙しい副社長の身。休みであろうとも自社の店や競合企業を見にいくこともあるという。経営者には休みらしい休みはないのかもしれない。
念のためにかけてみた電話は通じなかった。

でも一大決心をしてここまでやって来たからには帰りたくない。
何時に帰ってくるかわからないけれど待ってみよう。

亮介が車で出かけているのだとしたら、地下駐車場から直接部屋に行くだろう。歩きでも車でも、確実に会うには外で待つほうがいい。
里帆はエントランスから出て、地下駐車場入口を見渡せるところに立った。

時刻は午後六時。もしも彼が食事をして戻るとしたら、何時間か待つのも覚悟しなくてはならない。
幸いにも里帆はアフタヌーンティーでお腹が満たされているため、空腹は感じない。そもそもそんなものを感じる余裕はないのかもしれないが。

手袋をしていない手に〝はぁ〟と息を吹きかけながら、ひたすら待つ。つま先から立ち上ってくる寒さは、次第に里帆の体を冷やしていく。
着信がないかと何度か確認したスマートフォンを持つ手から、感覚がなくなりつつあった。
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