懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
空気が刻一刻と冷え込んでいく中、はらりはらりと里帆の前を白いものが落ちていく。
「……え? 雪?」
たしかに天気予報では今晩遅くから明け方にかけて雪が降るといっていたが、こんなに早くから降るとは。里帆が帰る時間帯には平気だろうと、雪対策をしていない。
細かい粉雪だった雪が、徐々に結晶の塊を大きくしていく。
空を見上げれば、真っ黒な空からいっせいに舞い降りたぼた雪が、街灯に照らされながら地面に着地する。
綺麗だなと思ったのは最初のうちだけ。頭や肩にも容赦なく舞い落ちた雪が、里帆を白く染めていく。
せめて屋根のあるエントランスの下に逃げ込めばいいのだろうが、足が凍りついて動けなかった。
どのくらいそうしていただろう。一台の車が里帆の目の前で止まった。
「……立川さん?」
下がったパワーウインドウから聞こえてきたのは亮介の声だった。
ペコッと小さく頭を下げる動きしか里帆にはできない。