懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました


「なにを言ってるんだ。店のことなんて気にしなくていいんだよ」
「そうよ。里帆ちゃんが幸せになるのに躊躇っている場合じゃないわ」


里帆の気持ちを汲んだ亮介の言葉に、一子と幸則が反論する。


「やっと一緒にいられるんですもの。ぐずぐずしていたらだめ」
「一子の言う通りだ。うちのことは心配しないで、今日明日にでもそうしたほうがいい」


優しく穏やかな顔で口を揃えた。

里帆を無条件に受け入れた三人が、同じように寛大な心で里帆を送りだそうとしてくれている。
その気持ちに里帆の胸が熱く震える。

この半年間、里帆の抱えきれないほどの不安と寂しさを癒したのは、ベーカリー工房みなみの優しさ。最後の最後まで惜しみなく与えられたそれに、どう言葉を返したらいいのか考えあぐねる。


「これからお腹もどんどん大きくなっていくでしょう? ひとりでアパートに置いておくのも心配だから、そろそろうちに呼ぼうかって話していたところだったの。だけど、お腹の子の父親と一緒にいるのが一番よ」
「一子さん……」


堪えきれず、里帆の目から涙がこぼれた。


「ありがとうございます」


声がかすれ、三人の姿が涙で滲む。亮介がそんな里帆の肩をそっと抱いた。

< 149 / 277 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop