懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
「なにを言ってるんだ。店のことなんて気にしなくていいんだよ」
「そうよ。里帆ちゃんが幸せになるのに躊躇っている場合じゃないわ」
里帆の気持ちを汲んだ亮介の言葉に、一子と幸則が反論する。
「やっと一緒にいられるんですもの。ぐずぐずしていたらだめ」
「一子の言う通りだ。うちのことは心配しないで、今日明日にでもそうしたほうがいい」
優しく穏やかな顔で口を揃えた。
里帆を無条件に受け入れた三人が、同じように寛大な心で里帆を送りだそうとしてくれている。
その気持ちに里帆の胸が熱く震える。
この半年間、里帆の抱えきれないほどの不安と寂しさを癒したのは、ベーカリー工房みなみの優しさ。最後の最後まで惜しみなく与えられたそれに、どう言葉を返したらいいのか考えあぐねる。
「これからお腹もどんどん大きくなっていくでしょう? ひとりでアパートに置いておくのも心配だから、そろそろうちに呼ぼうかって話していたところだったの。だけど、お腹の子の父親と一緒にいるのが一番よ」
「一子さん……」
堪えきれず、里帆の目から涙がこぼれた。
「ありがとうございます」
声がかすれ、三人の姿が涙で滲む。亮介がそんな里帆の肩をそっと抱いた。