懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
クスクス笑って返してハッとした。
「……亮介さん、その頃から私を?」
思わぬところに気がついてドキッとさせれる。
あの頃の里帆は、亮介に対して憧れこそあったが、雲の上の人という認識のほうが強かった。
「いるとしたら、里帆がそいつと幸せなら俺が波風立てるわけにはいかないって自制して。でも、里帆の誕生日はそいつより早く祝いたいって。かわいいな、俺」
亮介は照れ臭そうに鼻の下をこすった。
六つも年上の男性をかわいいというのは失礼かもしれない。でも、心からそう思ってしまう。過去の打ち明け話に愛しさが込み上げた。
あの夜のことは、今でもよく覚えている。亮介とプライベートでふたりきりになったのは初めて。不慣れな場所と相まって緊張は半端なかった。
「日付が変わった直後のメッセージ、すごくうれしかったです」
午前〇時を過ぎたと同時に亮介から届いた〝ハッピーバースデー〟とかわいらしいスタンプ。スマートフォンを解約した今となっては残っていないデータだが、その画面は今も里帆の心に焼きついている。