懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました


大きな窓の外にはフレンチレストランで見た夜景よりも少し目線が高く、開放感が抜群。当然ながら広いリビングスペースはゴージャスな内装で、それだけで自分がワンランク上の女になった気にさせられる。


「里帆はお風呂に入っておいで。お湯を張っておくようにお願いしておいたから、たぶんすぐ使えるはずだ」


なんて準備がいい。
里帆は遠慮なくそうさせてもらうことにした。

亮介の言っていたとおりバスタブにはたっぷりとお湯が張られ、森林のような爽やかな香りを放っている。白く煙る湯気までいつもと違って感じるのは、スイートルームマジックのひとつだろう。

シャワーを浴びて、バスタブにゆっくりと体を沈める。
不意に、亮介のマンションで想いを伝えた初めての夜を思い出した。

ちょうど一年前。今の季節のように寒い夜だった。
体をあたためながらも、心は緊張に震えていたあの夜。久しぶりに亮介と肌を合わせるのかと思うと、緊張感はあのときの比ではない。

亮介と一緒に暮らしはじめて約十日。再会してから、キスすらしていないのだ。
優しく抱きしめられたり、甘い言葉を囁かれたりするものの、恋人でいたときのようにごく自然に唇を重ねるということがまったくなかった。
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