懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました


隆一はゆっくりとソファに背中を預け、亮介をじっと見据えた。
これまでのように、冷ややかさや突き放すようなオーラを感じないのは気のせいか。


「会長に認めてもらうまで入籍はできないと、里帆が言っているんです。その彼女の気持ちを無視するわけにはいきません」


半年前、里帆の気持ちを無視して手切れ金を渡したことを暗に含めたつもりだが、隆一がそれに気づいたかどうか。

隆一の視線に重ねて、亮介も彼をじっと見る。
いい加減に認めてもらわなければ、里帆の出産に間に合わない。
目を逸らしたのは隆一のほうだった。


「中期三年計画については、もう一度よく目を通して精査しておく。打ち合わせは以上だ」


隆一は立ち上がり、自分のデスクに戻った。

これ以上ここでなにを言っても無駄だろう。
資料を整理し、野崎とともに会長室を後にした。

社長室に戻るなり興奮したように口を開いたのは、ほかでもなく野崎だ。


「社長、お子さんが産まれるって本当ですか!? っていうか、そんなお相手がいるなんて社内で噂にもなっていませんよね?」
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