懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました


「す、すぐに開けます」


声が上ずり、背筋がピンと伸びた。

マリオスターの社員だった里帆は、当然ながら会長である亮介の父親には会ったことがあるが、母親と妹はない。入籍こそしていないが、結婚の挨拶すらしていない状況だ。
モニター越しに険悪な感じはしなかったものの、なんて失礼な人間だと思われていないか不安になる。

オートロックの解除をして玄関のドアで待つこと数分。もう一度インターフォンが鳴らされると同時に、急いで扉を開けた。


「初めまして! 立川里帆と申します!」


勢いよく頭を下げたつもりではいるが、お腹が大きいため他人から見ればゆったりとした動作に見えただろう。


「申し訳ありません!」


続けざまに謝罪の言葉を口にすると、喜代は「あらどうして謝るの?」と不思議そうにした。
ショートカットがよく似合う、目鼻立ちのはっきりとした美人だ。


「ずっとご挨拶にも伺わず、大変失礼いたしました」
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