懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
「そうじゃないんです、本当にうれしくて……」
亮介と別れたとき、もう自分の世界は壊れたと思った。二度と心から笑えないと。
そんな暗闇を照らしたひとつの小さな光が、里帆を再び幸せに満ち溢れた世界へと連れだしたのだ。
「里帆さん、父も心ではもう許しているんだと思います」
「……そうでしょうか」
「この前、私のパソコンが故障して、書斎にある父のパソコンを借りたんです。そうしたらね、検索履歴に〝ベビーベッド〟があったの」
「あら、そうなの?」
杏の暴露に喜代が目を丸くする。
「きっと、里帆さんにひどいことをした手前、引っ込みがつかなくなっているんだと思うんです。一度反対したから、覆すのが難しいというか。頑固だから」
「あまのじゃくで困ったものね」
喜代と杏はクスッと笑い合った。
本当にもう許してくれているのだとしたら、それほど喜ばしいことはない。
「ご挨拶に伺わなくて大丈夫でしょうか……」