懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
もしも許すタイミングを逃しているのだとしたら、里帆がそのきっかけを作るのはどうだろうか。
思いきって挨拶に行き、里帆から頭を下げれば首を縦に振ってくれるのではないか。
「それじゃ今度、父の機嫌のいいときを見計らって、里帆さんに連絡しましょうか? お兄ちゃんと一緒に来たらいいんじゃないかな」
「ぜひお願いします」
里帆が膝に手を揃えて頭を下げたときだった。
「母さん? なに、杏まで?」
帰宅した亮介がふたりを見て驚く。
「賑やかな声がするから誰かと思ったら」
玄関のほうまで話し声が届いていたようだ。
「亮介がいつまでももったいぶって里帆さんに会わせてくれないから、杏と一緒に来たのよ」
「そうよ、お兄ちゃん」
「もったいぶってるわけがないだろ。まずは父さんの説得が先だと思ったからだよ」
「私たちは反対してないんだもの。こっそり会わせてくれたっていいじゃない」