懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
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正午を回った社員食堂は多くの社員が詰めかけ、賑やかな声はエレベーターホールにまで響く。
マリオスターの本社ビル三階に位置するそこは、フロア全体を使いゆったりとした造りになっており、社員がいっぺんに押しかけても満席ということがない。
里帆が初めてここを訪れたのは、入社してすぐにあった新入社員研修のとき。テーブルごとに色の違うカラフルな椅子や、開放感のある大きな窓に感嘆のため息を漏らしたものだった。
「仕事はどう? 少しは慣れた?」
丸テーブルの向かい合った席に座って早々、同期の岩崎由佳が尋ねる。
彼女の前には今日の日替わりのナポリタンがあり、視線は早くもそちら。ぱっつん前髪のショートボブのサイドを耳にかけ、由佳は早速フォークにくるくると巻きつけた。
「ぜんっぜん。副社長のペースも掴めなくて」
首を大きく横に振る。
異動して一週間。これまでの店舗勤務とは当然ながら職務がまったく違い、戸惑いが多い。