懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
「里帆が副社長の秘書だって公示されてから、どんな子?ってちょっとした騒ぎだったんだから」
「……そうなの?」
それは初耳だ。
「私たち、同期入社でしょ? だから私に探りを入れてくる女子社員がいっぱいいたよ」
里帆より一年早く本社勤務になった由佳は人事部所属。当然ながらどの部署よりも社員の情報には詳しい。同期入社と相まって、余計に聞かれたのかもしれない。
「今だって視線を感じない?」
由佳が声をひそませる。
そう言われてぐるっと見まわしてみれば、たしかにぱらぱらと女子社員たちと目が合った。
思わず背筋を伸ばして姿勢を正す。
「……見られてる」
「でしょ? 黒木副社長の近くにいる女には、みんなピリピリするの」
「やだな。なんで私だったんだろう」
ついぽろっと本音がこぼれる。