懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
◇◇◇◇◇
里帆がランチから副社長室へ戻ると、亮介は「出かけるぞ」とハンガーに掛けてあったジャケットを羽織った。
「えっ、外出されるんですか?」
予定では、午後二時から人事部長との打ち合わせが入っている。来春入社する新入社員のオリエンテーション内容に関する確認だったはず。
「午前中に物件の案内があってね」
いつも情報をくれる銀行から亮介に直接連絡が入ったという。現在、商業施設として営業しているモールが売りに出されそうだというのだ。それをすぐに見に行きたいと。
「ですが、午後は打ち合わせが」
「それならさっき昼飯を食べながらやったから」
「そうなんですか?」
やっぱりいきなりだ。それなら知らせてくれればよかったのにと思わずにいられない。人事部長から事前に預かっている資料もあったのだ。
「ほら、行くぞ」
「私もですか!?」