懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました


◇◇◇◇◇

本社に異動になって一ヶ月半。小売業にとって一年で最も忙しい十二月に入り、店舗も本社も慌ただしい時間が過ぎていく。
この頃ようやく仕事に慣れ、少しずつ行動に余裕ももてるようになった。

出勤して副社長室の掃除を終えた里帆は、執務室にある亮介の椅子に座った。そうして部屋全体を見渡し、快適な空間になっているか確かめるのが日課である。

椅子の座り心地や高さ、背もたれの角度はどうか。清涼な空気か。亮介が出勤してくる前に最良の状態にしておく。

先輩秘書である恭子に指導された基本中の基本だ。


「よし、今日もオッケー」


声に出してから立ち上がり、自分のパソコンから全店舗の前日の売上関連の数値を出力。亮介のデスクに置いた。

パソコンだとスクロールしなければ全画面を見られないため、全店分を朝一で確認するときには紙ベースのほうが都合がいい。個店ごとの詳細な検証となると話は別だけれど。

里帆が自分のデスクに戻ったところでドアが開く。亮介の出勤だ。
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