たとえば、こんな人生も
……気持ちいい…


いつきさんの匂いや体温に安心して

すっかりリラックス状態の私は
こてんといつきさんの胸に顔を寄せて目を閉じる


……………眠い……


「……ひなたちゃんは
酔うと甘え上手になるんだね」


眠気に誘われる中

いつきさんが溢した言葉に
重いまぶたをうっすら上げれば

困ったような、でもどこか嬉しそうな顔の
いつきさんが視界に映る


「普段からそうやって
もっとわがまま言えばいいのに」

「………もっと……わがまま……?」



……。



「……あのね…いつきさん…」

「ん?」


うとうと
まどろみを漂う中、ぽつりと言葉を溢す


「……わたし……ほんとうは……もっと」


もっと


「いつきさんと……いっしょに…」


一緒にいたい



叶うならもっと



だけど



私はあの家を、あの人を見捨てることが出来ない

あのまま放って置くことはどうしても出来ない

どうしても切り捨てられない



だから



「…」



伝えたい言葉はたくさんあったのに

眠くて、目を開けていられない


重さに負けてそっとまぶたを下ろす



「…おやすみ。ひなたちゃん」



優しい声と一緒に額に柔らかい感触



私は幸せな気持ちで深い眠りに落ちた
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