上司の過去と部下の秘密〜隠れ御曹司は本気の恋を逃さない〜
「ごちそうさま」

「コーヒーでもいれるね」

「いや。飲み物も片付けもいいから、こっちに来て」

2人でリビングに向かい合わせに座った。再び緊張してしまう。今からどんな話をされるのだろう……おもわず身がまえる。

「しおり。まずは異動のこと。話せなくてごめんな。さすがにしおりでも、同じ会社の社員である以上、話すわけにはいかなかった」

「うん。驚いたけど、それは仕方がないってわかってる」

「ありがとう。バタバタしすぎて連絡もままならなかったし、心配してたんだ。それから、もしかして噂になっていたみたいだから耳にしてるかもしれないけど、俺、一応社長の息子なんだ」

本当だったんだ……だけど……

「苗字が違うよね?」

「ああ。実の両親は離婚していて、俺は母親の姓を名乗っている。親父は……社長のことだけど、再婚してるんだ。
会社には、コネなしで自力で入った。興味のある職種だったからね。親父も、それを受け入れてくれた。一般社員として自力でやれることをしようと思って、これまでやってきた。
それが、ここにきて後継が……って言い出したんだ。前妻との子は俺だけだし、再婚してても子どもはいない。
親父、ちょこちょこ体調を崩すことも出てきて、急に心配になってきたんだろうな」

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