上司の過去と部下の秘密〜隠れ御曹司は本気の恋を逃さない〜
「親父。いつから飲んでるんだ?」

声を出せないぐらい唖然としていた私より、一歩早く涼介さんが動き出した。

涼介さんに手を引かれて、席に進んでいく。
うん。今、約束の時間ジャストだ。私たちは間違ってない。

「ん?いつだったっけ?あははははは……」

陽気だな。

「母さんまで。酔ってますよね?」

「あら、やだ。ねえ、恵さん」

「まだまだ酔ってないって。涼介、ほら。早く座って。乾杯するよ」

何回目の乾杯なんだか。
恵さんも、いい感じに仕上がっているようだ。

「えっと……今ちょうど約束していた時間だよね?どうしてもう出来上がってるの?」

私の呟きに、哲平さんがガハハと笑い出した。

「しおりは細けえなあ。相変わらず、かてえ頭だ。めでてえ時ぐらい、もっと力抜け」

「しおりちゃん。哲平さんの言う通りだよ」

だめだ。
社長が完全に毒されてる。

「親父、説明しろよ」

「おお、怖っ」

社長はおどけて怯えてみせた。
怒っちゃいけない、怒っちゃいけない……
私も涼介さんも、めでたい席を壊すまいと、ぐっと我慢して、状況把握に努める。

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