エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
人がほとんどいないこの公園は、それを実現できた。
そして私も、穏やかな時間を彼と一緒に過ごせるのが好きだった。
「こっちです」
駐車場に車を停めて、舗装されていない小道を進み大きなブナの木を目指す。
「ここ……」
宏希さんは足を止めて、右に左に視線を送り始めた。
なにか感じるものがあるのだろうか。
息を呑んでその様子をうかがっていたけれど、結局、記憶の引き出しは開かなかったようだ。
肩を落としてため息をついた彼は、突然私の手を握った。
驚いて手を引こうとしたものの、強く握られて許してもらえない。
「今日は、恋人でいて」
「……はい」
きっと思い出せない彼は、苦しみの中にいる。
けれども私は、この世でたったひとり愛する人に手をつながれて、胸を高鳴らせていた。
「ここに座って、よくボーッとしてたんです」
ブナの木の下が私たちの定位置だった。
雨が上がり日差しが強くなってきた今日も、風があるので心地がよさそうだ。