エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
そうかもしれない。
会社では毅然としてなんでもてきぱきとこなし、どこにも隙がないように見える彼だけど、意外と甘えたがりで、私の前では無邪気に笑った。
そんな姿を私しか知らないことに、彼女としての優越感を覚えていた。
下から私を見上げる彼と視線が絡まり、解けなくなる。
「忍」
とびきり柔らかな声で名前を呼ばれ、胸を鷲掴みされたような痛みが走る。
彼にこうして優しく呼ばれるのが好きだったから。
宏希さんは手を伸ばしてきて、そっと私の頬に触れる。
そして体温を確認しているかのようにしばらく離そうとしない。
たちまち全身が火照りだし、冷静ではいられない。
けれど、熱い眼差しにつかまったままそらせなかった。
「忍」
もう一度私の名を切なげな声でささやき、眉をひそめる彼を見ているのがつらい。
思い出したいのに、思い出せないのだろう。
「宏希、さん……」
私はたまらなくなり、彼の名前を口にした。