エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~

「そうですね。お腹空きました」


春の暖かな風が私の髪をふわっと揺らす。
桜は散ってしまったが若葉が芽吹き始めていて、鮮やかな新緑がまぶしいほどだ。

お腹に宿った命が、来年の今頃はもうこの世に誕生していると思うと感慨深い。

宏希さんは私を気遣うように腰を抱き、ゆっくりと駐車場のほうに足を進めた。


――ブオン。

するとそのとき、エンジンをふかす音が耳に届いてそちらの方向に顔を向けた瞬間、「忍!」という宏希さんの叫び声とともに体が吹き飛んだ。


「嘘……」


路肩の芝生に倒れ込み顔を上げた瞬間、全身に鳥肌が立つ。
私たちが歩いていたところに車が突っ込んでいて、フェンスにぶつかり停止していたのだ。


「……宏希さん? どこ?」


彼の姿が見えず事故を起こした車に駆け寄った。

すると車の向こう側に頭から血を流した彼の姿を発見して気が遠のきそうになる。


「嫌! 宏希さん?」
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