エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
「宏希さん……」
しまった。
つい下の名前で呼んでしまった。
「忍にそう呼ばれると、胸がカーッと熱くなる。なにかがあふれ出てきそうなのに、厚い壁に阻まれているような……。クソッ」
悔しそうに唇を噛みしめる彼は、私の手をそっと握った。
「沖も他の友達も、記憶をなくして落ち込んでいた俺を献身的に支えてくれた。だから頭が上がらない。でも、どうしても心の中にぽっかり空いた穴が埋まらなかった。絶対に足りないものがあったんだ」
それが、私の存在だとでも言うの?
「公園で波多野さんを見つけた瞬間、うまく言えないけど、胸に温かいものがなだれ込んできて……。ようやく心が満たされて時計の針が動きだした気がしたんだ」
そんなふうに言われてうれしくないわけがない。
私も、本当はずっと彼と一緒にいたい。
たとえ家政婦でもいい。
同じ時間を共有できるだけで、たまらなく幸せ。