エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
彼は私を腕の中に誘い、閉じ込めた。
そのとき初めて涙が流れた。
声を殺して泣いているのに彼は気づいたらしく、私の背中を優しくトントンと叩いて励ましてくれる。
「忍のせいじゃないよ。和宏くんは大丈夫だ」
「宏希さん……。はい」
優しい声は、緊張で荒ぶった私の心を穏やかな状態に導く。
「ずっと、こうやってひとりで奮闘してきたんだな。不安、だったね」
「……はい」
私は素直に返事をした。
和宏が無事に誕生して喜びがあふれたが、不安は常にあった。
今となってはもりもり食べて困るほどだけど、小さな頃は食が細くて心配したし、今日のように突然高熱を出して夜中に病院に走ったこともあった。
いつも気を張り詰めて生活していたような気もする。
それから彼はなにも言わずにしばらく泣かせてくれた。
泣くという行為が、これほど心を落ち着けるものだと知らなかった。
しばらくして離れると、彼は私の頬を伝う涙を大きな手で拭い、安心させるかのように緩やかに口角を上げる。