エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
予期せぬ人からの呼び出しに、完全に思考が停止する。
私がパートとして復帰していることは社長に秘密にしてあるはずなのに、もう知られているということだ。
しかも、おそらく噂について問いただされるのだろう。
「あ、あと俺やっておきますから」
「ごめんなさい」
坂田さんの声で我に返った私は、モップを渡して佐藤さんのあとに続いた。
最上階は、重役フロア。
宏希さんの部屋もあるはずだ。
しかし、一介の社員に用はないので足を踏み入れたことすらない。
立派な花が飾られ、きちんと掃除が行き届いた長い廊下を緊張しながら歩く。
なんと言われるだろうか。
そのうち専務室と掲げられた部屋の前を通り、思わず目が向く。
宏希さん、助けて……。
しかし心の声が届くはずもなく、ドアが開くことはなかった。
そもそも忙しい人なので、社内にいるかどうかもわからない。
「こちらです」