エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
「あれ、おじちゃん、写真の人?」
「写真?」
和宏が余計なことを言い始めたので慌てて駆け寄り、「ありがとうございました」と深く頭を下げてから彼の腕を引いた。
「知らない人と仲良くお話しちゃいけません」
「知らない人じゃないよ。写真のおじちゃんだもん!」
あぁ、余計なことを口にしたのは私のほうだ。
「とにかく、今日はもう終わり。……あっ」
和宏とつないでいた反対の手を不意につかまれて、ドクッと心臓が跳ねる。
「待ってください。波多野さん、だよね?」
「そうだよ。僕は波多野和宏」
『違います』という隙もなく、和宏が答える。
宏希さんは私たちの前に回り込んできて、和宏の視線にあうように腰を折った。
「和宏くんか。俺は、浅海宏希と言います。よろしく」
ふたりが満面の笑みを浮かべて握手を交わしているのを複雑な気持ちで見ていた。