エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
「俺の写真、見たことあるの?」
「うん、ママの手帳にいつも挟んであるよ」
あのマンションを出てからも、宏希さんに託された婚姻届と彼の写真を持ち歩いていた。
和宏が産まれたとき、いつまでもすがっていてはいけないと婚姻届は破ったが、彼の写真だけはどうしても捨てられなかったのだ。
「和宏、行きますよ」
もうこれ以上はつらい。
どうやら記憶が戻っているわけでもなさそうだし、忘れようともがいているのに関わりあいになりたくない。
私は再び歩き始めたが「待って」と立ちふさがれてしまった。
「和宏くん、お腹空いてない?」
「空いた! オムライス食べたい」
「おっ、俺もオムライス大好きなんだ。卵がふわふわのやつ」
宏希さんの発言に鼓動が速まるのを止められない。
「僕も! ママが作るの上手なんだよ。おじちゃん、食べにおいでよ」
「和宏!」
動揺で叱るような大きな声が出てしまい、反省した。
和宏はなにも悪くないのに。