エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
そういうことになってしまうのか。
私は宏希さんだけが好きで……彼がすべてだったのに。
「そう、です。他の人とも付き合っていました。ごめんなさい」
心が悲鳴をあげる。
涙がこぼれそうになったがグッとこらえた。
今さらだ。
宏希さんには私との間にあった幸せな時間の記憶がないのだから。
それにきっと、彼には両親が理想とする奥さまがいて、私たちが入り込む余地なんてない。
彼は小さなため息を落としたあと、再び口を開く。
「引き継ぎのメール、本当に助かった。顧客の名前すら思い出せなくて苦労したけど、あれがあったおかげで乗り越えられた」
「よかった、です……」
身を切られるような気持ちで送信したメールが役に立ったのなら、送った甲斐があった。
「俺のパソコンのパスがわからなくて……」
そうか。私のパソコンのパスは知らせたものの、あのときは頭がいっぱいでそこまで気が回らなかった。