エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~

そういうことになってしまうのか。
私は宏希さんだけが好きで……彼がすべてだったのに。


「そう、です。他の人とも付き合っていました。ごめんなさい」


心が悲鳴をあげる。
涙がこぼれそうになったがグッとこらえた。

今さらだ。
宏希さんには私との間にあった幸せな時間の記憶がないのだから。

それにきっと、彼には両親が理想とする奥さまがいて、私たちが入り込む余地なんてない。


彼は小さなため息を落としたあと、再び口を開く。


「引き継ぎのメール、本当に助かった。顧客の名前すら思い出せなくて苦労したけど、あれがあったおかげで乗り越えられた」

「よかった、です……」


身を切られるような気持ちで送信したメールが役に立ったのなら、送った甲斐があった。


「俺のパソコンのパスがわからなくて……」

そうか。私のパソコンのパスは知らせたものの、あのときは頭がいっぱいでそこまで気が回らなかった。
< 47 / 314 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop