エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~

しかもまた会ったりしたら、宏希さんの記憶が戻るのではないかという私の期待が膨らんでしまいそうで怖い。

慌ててふたりの会話に口を挟んだものの、宏希さんは頬を緩ませて首を横に振っている。


「仕事のときはもちろん言うから、そうさせてもらえないだろうか。波多野さんといると、記憶の引き出しが開きそうなんだ」


私の握力が弱いことを無意識に思い出したからだろうか。

空白の時間の記憶を取り戻したいという彼の気持ちは理解できる。

私だって、歩いてきた人生の一部がなかったことになってしまったら悲しいもの。


「でも……」
「お願い」


強く懇願されて、うなずいていた。

私が来週の約束を強く拒否しなかったのは、彼が過去を取り戻すことに協力したかっただけだろうか。

それとも、また宏希さんに会えることがうれしいから?

激しく揺れ動く自分の気持ちがよくわからなくなった。
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