陰の王子様
…これから先、
結婚、とかだろうか。
貴族になれば、遅かれ早かれきっと結婚はできるだろう。
それが、たとえ政略結婚でも。
少し私の表情が曇ったのか、サンチェさんが、
「あー、ごめんごめん。気にしない気にしない。レティシアは幸せになれるから、王子様がきっと迎えに来るよ?」
「…何言ってるんですかサンチェさん。似合わないですね。」
「ひどいねー。俺、割とこういうタイプなのに。」
へらっと笑うサンチェさん
ひどいひどいと言いながら、泣く真似をする。
「あー…、ごめんなさい。」
ちょっと、面倒だと思いながらサンチェさんに手を伸ばす。
「サンチェ」
人の声がして、私は体を縮こませる。
まずい…、侵入者だと思われてるかも。
すぐ顔を上げて私の後ろを見るサンチェさんは、手を上げて、「やっほー。」と言った。
……大丈夫そう?
軽い口調のサンチェさんに少しホッとしたのか、つられて振り返ってしまう。