陰の王子様
「私の娘が何か。」
ジョセフさんが眉を顰め、ライラ様に問いかける。
それを、ふんっと鼻で笑って、声高らかにライラ様は言った。
「ここでは、イオ様以外の男性と会うことは固く禁じられております。それにも関わらず、この女は、あろうことか、騎士と密会をしていたのです!」
「証拠は。」
「私の侍女が見ています。黒髪の短い女性が騎士と会っていたと。」
「どの侍女だ。」
その言葉に、私の側にいた1人の息が止まったのが分かる。
「そこの侍女ですわ。」
一気に注目を浴びる彼女は微かに震え始める。
「本当にレティシア・コヴィーだったか。」
俯いて震えている手を必死で握りしめている彼女
それを見ていると、自然と手が伸びて、震える手を包んでいた。
「えっ…。」
顔を上げた彼女は涙が今にも溢れ落ちそうで、私と目があうと、苦しそうに顔を歪ませた。