1日限定両想い
『大阪へ行ってからはどうするの?』
「パン屋さんで働くことになってます。」
『パン屋さん?』
駅までの道を並んで歩きながら、もうすぐ始まる大阪での生活を想う。
「渉さんのマンションの近くにあるんです。近い方が安心だからって。」
『本当に大事にしてるのね。あのぶっきらぼうで不愛想な菊池先生が。』
「そう見えるだけで、本当は優しいんですよ。」
『あら。』
くすくすと笑う竹石先生につられて私も笑う。
皆渉さんのことを怖そうだって言うけれど、私にとっては最初から優しい人だった。
『新しい学校も楽しくやってるみたいね。』
「はい。楽しいって言ってました。」
渉さんは教師に復帰して、また鬼と呼ばれているそうだ。
大阪だから、イジられているというべきか。
『じゃあ、元気でね。』
「竹石先生も。」
駅で別れると、すっと心が軽くなっていることが分かった。
さっきよりもずっと、渉さんに会いたいと思っていることも。