1日限定両想い
「ばあちゃんがどうした?」
『いないの、どこにも。ご飯だよって呼びに行ったのに。私が見てなきゃいけないのに。』
「須崎、落ち着け。」
『どうしよう。どこかで事故に遭ったりしてたら…誰かに迷惑かけてたら…。』
「須崎!」
俺の声など聞こえていないみたいに泣きじゃくる須崎の肩を掴んで、顔を見た。
今日初めて目が合った須崎がはっとしたように黙ったけれど、流れる涙は止まらなかった。
「分かったから、1回落ち着け。」
『菊池先生…。』
目の前にいるのが俺だとようやく気付いたように呟いた声に、余裕のなさがうかがえる。
俺もようやく肩を掴んだままだったことに気付き、さっと手を放した。
焦って飛び出してきたのか須崎は明らかに薄着で、とっさに羽織っていたパーカーをかけてやった。
「ばあちゃんがおらんのやな?家の人は?」
『まだ帰ってません。弟は家にいます。』
「連絡は?」
『してません。』
なんで、と思った。
須崎は今、なんでこんな状況にひとりでいるんだ。