秘密の片想い

「ケンケンがさ、いい加減、スッチー諦めようかなって言ってる」

 懐かしい話に目を細める。

「そうなんだ。瑠夏、長いこと付き合っている恋人がいるもんね」

「まあ、ケンケンには高嶺の花だよなあ。スッチーは。でも、ケンケンいい奴なのに」

「それ、ケンケンには褒め言葉にならないでしょ」

「ああ、まあ、そうなんだけど」

 いつも女性に「いい人過ぎて男として見られない」と言われ、振られるらしい。

 少し話せば当時の関係に戻れたように、自然に会話が続く。

「シーは、タケウチ保険事務所でも頑張ってるみたいだな。武内所長が言ってた」

「それは、もちろん。頑張りますよ」

「うん。そうだよな。安心した」

 そうやって、甘やかすような優しい言葉を、当たり前にかけないで。

 どうして突然いなくなったんだよ、とか。
 連絡も取れずに心配したんだぞ、とか。

 非難されるかもって思っていたのに。

 蓋をしている気持ちは簡単に揺らぎそうになり、テーブルの下でギュッと手を握りしめる。
< 15 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop