秘密の片想い

 どうして、三嶋が頻繁にここへ来るのか。

 彼の行動が読めなくて戸惑っていると、先にビルへと入って行った三嶋がマフラーを片手に再び、外にいる私へ歩み寄った。

「これ、先ほどのお客様の忘れ物じゃないのか」

「あっ」

 それは深い臙脂のマフラー。
 ご主人が巻いていた映像が、頭に思い出された。

 マフラーを差し出す三嶋は、私の肩に手を置いた。
 体を固くする私へ、彼は私だけに聞こえるように言った。

「お客様、不安そうな顔してた」

 不安そうな、顔。

 マフラーを受け取り、慌てて追いかけて声をかける。
 ゆったり歩いていた二人には、すぐに追いついた。

「これ、お忘れです」

 ご主人は自分の首元に手をやり「おやおや、年かねえ。ありがとう」と、穏やかに微笑んだ。

「あの、なにか気がかりが、おありですか」

 弾む息を整えながら、私はお二人に聞いた。

「え?」

 驚いたお二人は、顔を見合わせている。

 三嶋がそう言う時は、悔しいけれど絶対になにかある。
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