秘密の片想い

 結局なにも出来ずに、ただ最初の話を聞いただけで終わってしまった。
 そのお客様が帰られると、先輩はコソッと耳打ちをしてくれた。

「気にしないで、意味もなく若い女の子を嫌煙する人もいるから。私はその時用の人員」

 優しい言葉をかけられ、救われた気持ちではあったけれど、どこかやるせない気持ちが渦を巻く。

 私だって自分がお客だったら、こんな小娘よりも、ベテランの保険がわかっている人に相談したい。

 わかっている。わかっているんだけどさ。
 消化しきれない思いは、もやもやと残る。

 そんな時は、誰ともなく飲みの誘いがあった。

 たまたまかもしれないけれど、悩んだ時や、仕事で躓いた時。
 誰からともなく、お誘いがあって、4人の中で集まれる人が集まってお酒を飲んだ。

 直接弱音を吐くこともあれば、ただ集まって騒ぐだけの時もある。

 私もこの日は、ただみんなと会いたくて招集メールを送った。

 研修の時ほど、顔を合わせる機会はなくなったけれど、たまに会えるだけで、どれほど救われたかわからない。
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