秘密の片想い

 早めについた居酒屋で待っていると、次に来たのは三嶋だった。

「お疲れ。珍しいな。シーから誘いが来るの」

「そう、かな」

 落ち込んでいると悟られるのは、どことなく気恥ずかしい。
 私はなんでもない風を装った。

 三嶋は気づいていないフリをしてくれたのか、それ以上、特に誘った理由には触れてこない。

 それよりも、目下の話題は別にあった。

「ライフプランナーの試験、受けるだろ?」

「うん。やっぱり保険単体の良さを知っていても、どうお客様にいいのか、勧めづらくて」

 今日だってお客様の知識の多さに圧倒されてしまったのが、顔に現れたんだと思う。

 もっと勉強して、自分に自信を持ちたい。
 自信を持って、いい保険を勧めたい。
 その思いが強くなった。

 こんな熱い精神論みたいなのは、特に三島みたいな飄々と生きている人には言いづらい。
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