秘密の片想い
「お母さん? ごめん。莉乃、離乳食まだなの。キッチンの戸棚……」
莉乃の熱はもう下がっているから、お腹も空いているはず。
食べさせなきゃ。
そう思いながら目を開けて、驚く。
莉乃はテーブルに着いていて、スプーン片手に離乳食を食べている。
お母さん、もうやってくれていたんだと母の姿を探して別の人物を見つけ、「えっ」と小さく声を発した。
部屋の隅には大きな体を小さくし、存在感を消そうとしている、三嶋?
三嶋は私と目が合うと、弱々しく片手を上げた。
「ふっふふ。どうして、そんなに隅っこに?」
「俺が……」
「ふえっ」
莉乃が泣き出しそうな声を聞き、三嶋は慌てて口を手で覆って、声を殺した。
「そっか。ごめん。莉乃、泣くものね。でも、離乳食は三嶋が用意してくれたんでしょう? ありがとう」
三嶋は部屋の隅で数度、頭を縦に動かした。