イルカ、恋うた
「何が?」


「だって……」


拗ねたようにうつむく。


「お待たせしましたぁ」


と、店員が戻ってきて、それ以上は訊けなかった。


商品はあったようで、そのまま会計に入った。


「わざわざありがとうございました」


美月がお礼を言い、支払いを済ませた。


店を出ると、「じゃ、戻ろ」と言った。


しかし、その時…


「あら、竜介」


女性が近づいてきた。


「ああ、サヤ」


「へへ。久しぶり」


最後に会ったのは、セーラー服に元気そうな、黒髪のショートカットだった。


今はミニのワンピースに、腰までのウェーブした金髪に、本当に誰だか分からなかった。


「……大人っぽくなったな」


「竜介は変わんない」


「うるせー。相変わらず、一言多いよ。お前は」


美月がギュッと手を握った。


ああ、戻らなきゃ。


「ごめん。もう、行かなきゃ」


「あ、待ってよ。じゃあ、連絡先教えておいてよ。いいでしょ?それとも、元カノだから嫌?」


「あのなぁ……」


不意に美月が声をあらげた。


「帰るの!竜介、行こう!」


「えっと、この子は?」


サヤは不機嫌そうに訊く。


刑事になった、って知らないはずだし…


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