イルカ、恋うた
彼女を方を見ると、膝を抱え、うつむくように座ってる。


「ちゃんと、話をしてやれ。俺は車を移動させる」

ゆっくりと、美月に近付いた。


「あの、ごめん…なさい……アイツ昔から、ちょっとデリカシーないと言うか、思ったことは言っちゃう性格だったんです……あの、お嬢さん…」

相手に合わせて、目の前でしゃがみ込んだ。


「敬語イヤ」と、彼女は言った。


それでも、顔は伏せたままで、質問してきた。


「あの人、付き合ってたんだ?」


「うん」


「……好きだった?」


意外な問いに、答えに迷った。


えっと、確か……付き合って、って言われて。


それまでは友達だったんだよな。


気まずくなるのも、嫌し、友達として好きだったのかなぁ……?


うーん、“好き”でいいのかなぁ。


「早く、答えて!」


顔を上げた彼女は、すでに涙を流してた。


――なんで?過去じゃん。そもそも、そんなけこと……


「君には関係ないよ。さ、そろそろ。岩居さんが……」


俺は立ち上がった。


丁度、予測通りに、岩居さんの運転する車が、やって来る。



< 67 / 224 >

この作品をシェア

pagetop