溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~【番外編】

「菜々子は広海に甘すぎる」

「強引に追い返すなんて、かわいそうじゃないですか」

拓海さんがソファに腰を下ろし、前髪をクシャリと掻き上げる。

「広海の肩を持つのか?」

「そういうことじゃなくて……」

ご機嫌斜めになってしまった拓海さんを前に頬を膨らませると、チャイムが鳴った。玄関ホールに行き、広海さんを招き入れる。

「いらっしゃい」

「お邪魔します」

家に上がった広海さんの後を追い、リビングに向かった。けれど拓海さんはソファに横になり、広海さんと目を合わせようとしない。

「あれ? なんか機嫌悪い?」

広海さんが首をかしげる。

「誰のせいだと思ってんだ」

拗ねながらも、反論だけはする拓海さんがおもしろい。

「夕食まだでしょ? 食べていって」

「サンキュ」

広海さんと小さく笑い合った。

拓海さんはまだソファに寝転がったまま。普段は冷静沈着なのに、ここまで不機嫌になるのは珍しい。

「夕食は拓海さんの好きなブリの照り焼きですよ」

耳もとでささやき、広海さんに見えない角度で短いくちづけを頬に落とす。

「手伝うよ」

「ありがとう」

横たえていた体をスッと起こした拓海さんと微笑みながら、キッチンに向かった。

< 7 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop