溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~【番外編】
「菜々子は広海に甘すぎる」
「強引に追い返すなんて、かわいそうじゃないですか」
拓海さんがソファに腰を下ろし、前髪をクシャリと掻き上げる。
「広海の肩を持つのか?」
「そういうことじゃなくて……」
ご機嫌斜めになってしまった拓海さんを前に頬を膨らませると、チャイムが鳴った。玄関ホールに行き、広海さんを招き入れる。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
家に上がった広海さんの後を追い、リビングに向かった。けれど拓海さんはソファに横になり、広海さんと目を合わせようとしない。
「あれ? なんか機嫌悪い?」
広海さんが首をかしげる。
「誰のせいだと思ってんだ」
拗ねながらも、反論だけはする拓海さんがおもしろい。
「夕食まだでしょ? 食べていって」
「サンキュ」
広海さんと小さく笑い合った。
拓海さんはまだソファに寝転がったまま。普段は冷静沈着なのに、ここまで不機嫌になるのは珍しい。
「夕食は拓海さんの好きなブリの照り焼きですよ」
耳もとでささやき、広海さんに見えない角度で短いくちづけを頬に落とす。
「手伝うよ」
「ありがとう」
横たえていた体をスッと起こした拓海さんと微笑みながら、キッチンに向かった。