一生、俺のそばにいて~エリート御曹司が余命宣告された幼なじみを世界一幸せな花嫁にするまで~
眠っている彼女に問うが、答えるわけがない。
ハーッと息を吐いて、彼女に背を向けて眠ろうとする。
璃子のことを頭から追い出そうとしたんだ。
しかし、三十分経っても全然眠れない。
頭は彼女のことでいっぱい。
小さい頃の璃子ではなく、俺の家に突然転がり込んで来てからの彼女の顔が浮かんでくる。
『単位落としちゃって、留年しました〜』とおちゃらけた表情で報告する彼女。
『サバの味噌煮作ってあげるね』と弾けるような笑顔を向ける彼女。
『あら、私の育ての親のひとりは匡だよ』と悪戯っぽく目を光らせる彼女。
少女のようにかわいい時もあれば、こちらが驚くような色っぽい表情をする時もある。
いつの間に大人になったのだろう。
まあ、俺ももう二十八。璃子が大人になるのも当然だ。
身体は疲れているのに、頭は起きている。
「あ~、逃げずに、受け入れろってか」
苦笑いしながら璃子の方を向いてその身体を抱き寄せる。
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