一生、俺のそばにいて~エリート御曹司が余命宣告された幼なじみを世界一幸せな花嫁にするまで~
俺が食べて薬飲むまで帰らないだろうな。
『……りんご』
ハーッと溜め息交じりに言えば、彼女はサイドテーブルに置いてあったりんごと果物ナイフを手に取り、器用に皮を剥いていく。
『じゃあ、剥いてあげる。食べたら薬飲もうね』
どこか子供に言い聞かせるように話す彼女に顔をしかめた。
『璃子、お前……人が病気なのに嬉しそうだな』
『そりゃあ、いつも偉そうにしている匡が病気で寝てるんだもん。お世話するのが楽しくって。こんな機会滅多にないでしょ』
剥いたりんごを皿に並べ、フフッと笑う彼女。
『お前ねえ、人の不幸を……ゴホッゴホッ』
文句を言おうとしたら、激しく咳き込んだ。
『ほら、そんな大声で喋ろうとするからよ』
そう注意して俺の背中を擦る璃子に掠れた声で確認する。
『今、何時だ?』
『夜の九時過ぎ』
『俺が薬飲んだら帰れよ』
念を押すが、彼女は適当に返事をしてフォークでりんごを刺し、俺に差し出す。
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