俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
昼休みの食堂で、由真ちゃんは先ほどの満川さんの不満をかみ砕いて報告してくれた。

立ち聞きしてしまったとはとても言えない。


「いくら急ぎの状況だったとはいえ、あれは明らかに満川さんのミスです」

食後のコーヒーを飲んでいる後輩は、割り切り上手なうえに、私の性格をよく知っている。

「でも私の説明不足だと思うし、聞きにくい雰囲気を出してしまっていたのは事実だろうから……」

「相変わらず沙和さんは優しくて真面目ですよね。なんでも自分の責任にして引き受けていたら疲れますよ。しかも外見はお人好しに見えないので損していますし」

後輩が辛辣な評価をしてくれる。

「沙和さんの指導方法は間違えてないですよ。厳しいですけど、丁寧に教えてくれますよね。そのおかげで私は成長できたと思っています」

上司としてはまだまだ未熟な私へ向けてくれた、後輩の優しい言葉がありがたかった。


「……ねえ、由真ちゃん。私、社内用の靴を変えたの知っていた?」

「え? 靴、ですか?」

唐突な話に後輩は瞬きを数回繰り返す。


「少し前の話なんだけど……」

「気づいてましたよ、以前はオープントゥパンプスでしたよね?」

返事をしながら、後輩は私の足元に視線を向ける。


「うん、でもこの新しい靴、靴擦れがずっとひどくて痛かったの」

「そうなんですか? それは気がつきませんでした。言ってくださいよ。最近沙和さん、何回か資料室行き来してましたよね、つらかったんじゃないですか?」

代わりに行きます、と申し出てくれる後輩の返答が心に痛くて嬉しかった。


毎日顔を合わせて、話をして、長い時間を同じ場所で過ごしている後輩ですら私の足の異変には気づいていなかった。

自然に見える歩き方を心がけていたせいもあるだろう。

私だって同僚の足の状態になんて、よっぽどでない限り気づく自信はない。
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