俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
トン、と心の隅でなにかが動いた気がした。


それでも……あの人は気づいた。


会ったのは三回、そのうちの一回は泥酔してなにがあったのか覚えていない。

きっとまともに歩けてもいなかっただろう。

だとしたら、きちんと歩いている姿を見せたのは二回目の再会の時くらいだ。

その一度だけなのに、彼は一切の迷いもなく私に尋ねた。


『ところで今日会った時から思ってたんだけど、歩き方おかしくないか?』

『足、痛めてるのか?』


どうして。

なんでほかの誰でもないあなたが気づくの? 私の隠した痛みになぜ。


心がかき乱されて泣きたくなる。

こんな気持ちは初めてでどうしていいかわからない。


「今は大丈夫なんですか?」

黙り込んでしまった私に由真ちゃんがもう一度尋ねる。

「うん、もうほとんど治っているから」

「無理しないでくださいね」

優しい後輩はいつも細やかな気遣いを示してくれる。


満川さんを見てきます、と先に席を立った由真ちゃんを見送って、ぼんやり席に座っていた。

食堂内は大勢の人が出入りしていて相変わらず賑やかだ。大きな窓から見える空は憎らしいくらいに晴れ渡っている。


目を閉じると当たり前のようにあの人の面差しが浮かんでうろたえる。

なんだか考えすぎて疲れてしまった。


私に恋愛はやはり向いていない。
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