俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「愁くんはビジネスは器用なのに、沙和ちゃんに関しては余裕がまったくないねえ」

「し、城崎さん」

朗らかに話す城崎さんとは対照的に、端正な面差しには明らかなイラ立ちが浮かんでいる。

初めて見る少し余裕のない姿を、思わず凝視してしまう。


「……なんだ?」

どこか拗ねたような声を出すこの人は、本当にあの板谷社長とは思えない。

「いえ、そういう姿を初めて拝見したと思って……」

「沙和ちゃん、愁くんは昔からこんな感じだよ。もう小さい頃は、それはそれはやんちゃでねえ」

ニコニコと楽しそうに城崎さんが言う。


「……昔の話はいい。沙和、撮影会に行くぞ。その庭園の改装案を聞かせてくれ」

「えっ、それなら城崎さんも……!」

突然私の手をグイッと引っ張って、管理人室のほうに歩きだす。


「私はいいよ。愁くんに任せておけば安心だし、ゆっくり過ごしておいで。愁くん、いくら沙和ちゃんが可愛いからって無理強いはしないようにね。きちんと手順を踏まないと逃げられるよ」

柔和な中に厳しめの声を滲ませて、城崎さんが言う。


「……わかっています」

先ほどとは一転して、なぜか真摯な声で応対する愁さん。

なんの会話なのか、ともはや口を挟むのも憚れる。

失礼します、と慌てて告げると、城崎さんは手を振って見送ってくれた。
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