俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
フイと視線を逸らし、自身の口元を大きな手で覆う。

いい大人がカッコ悪いな、とひとりごちる彼に胸の中が熱くなって、なにを口にすればいいかわからなくなる。


トンと軽く私の肩に愁さんが頭を凭せ掛け、艶やかな黒髪が僅かに頬に触れる。

突然の行動に身体が強張ってしまう。


「……俺は沙和の全部を知りたい」


絡めたままになっている指に力が込められ、首筋に吐息がかかる。

切なさの込められた声が心に染みわたっていく。


心臓がもう壊れてしまいそうだ。

近すぎる距離に身じろぎすらできない。

本気で想われているのだと自惚れそうになってしまう。


そんなはずはないのに。


肩から頭をおこした彼に至近距離で見つめられて、鼓動が大きく跳ねた。

「今日はあのピアスじゃないのか」

長い指がそっと私の耳朶に触れる。

「あ、あれは主に仕事の時に使っているので……」


仕事で落ち込みそうになった時に可愛いピアスを身に着けていると思うと、気持ちが少し上向いて落ち着くので、いただいたピアスは主に仕事用になっている。
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