俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
豪奢な造りの広いお手洗いは幸いにも無人だった。


深い息を吐いて鏡に映る着飾った自分を見つめる。

見かけはどこかの令嬢のように見えるけれど、所詮付け焼き刃で本物には程遠い。

表情の冴えない自分に溜め息をついた時、ガチャリとドアが開く音がして誰かが入ってきた。


「あら、ずいぶん余裕なのね。こんなところで休んでいるなんて……そのドレスを着ているから強気なの? だからって安心しないほうがいいわよ」

冷たい声に心臓を鷲づかみにされた気になる。

「辺見さん……余裕なんてないです。あの……このドレスになにか意味があるのですか?」

「……あなた、まさかドレスの意味を知らないの?」

「はい」

即答する。

目を見開いた辺見さんは苦々しそうに化粧直しをしつつ、唇を歪めた。


「……信じられない。何度頼んでも私はそのドレスは贈ってもらえなかったのに。そのドレスの色を見て気づかない? 青とゴールド、板谷ホールディングスのイメージカラーよ」

その言葉に息を呑んだ。

「板谷ホールディングスのイメージカラーを纏う親族以外の未婚女性は、板谷家が認めた“正式な”婚約者だという意味があるの。頼子さんの時は田所さんがそのカラーのネクタイを身に着けていたわ。愁くんはそれを誰よりもわかっているはずなのに!」

勢いよく言い放つ姿は初対面の時のようなたおやかなイメージとかけ離れていた。


教えられたドレスの意味に呆然としてしまう。

皆が注目するわけだ。
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