俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「ピアス、覚えてるか?」


不意に落ちてきた言葉に頭を上げると、なにかを企んでいるような目にぶつかった。

その瞬間、耳朶から消えていたお気に入りのピアスが脳裏に浮かんだ。


あの日着ていた服をすみからすみまで探したけれど、見つからなかった。

ホテルの部屋番号を覚えていなかったので、恥を忍んで頼子さんにホテルに問い合わせてもらっても見つからず、泣く泣く諦めていた。


「眠る時に『ピアスが当たって痛い』って騒ぐから、外して俺が預かってる。今日はそれも言いに来たんだ」


……なんたる失態。


失神したくなるような事実に声も出ない。

にっこりと優しい目を向けられる。

なぜかとても楽しそうだ。


この人の意図がわからない。

不機嫌に詰ってきたかと思えば甘やかな態度を見せる。


一体、私をどうしたいの?


男性にピアスを外してもらうだなんて。

過去に付き合った人にも弟にも、そんな行為をしてもらった経験はない。

もう穴があったら入りたい。

いや、掘ってでも入りたい。


「あ、ありがとうございます……失くしたと思っていたのでとても嬉しいです」

「そうか? じゃあ今度また持ってくる」

甘い低音が耳をくすぐる。

見つめ返した目には柔らかな表情が映る。


「……へ?」
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