さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
「そうか、だったら久しぶりに夕飯をみんなで食おう。
冬美になにか美味いもんでもつくってもらうから、至公と待ってるよ」
『冬美』というのは父の「奥さん」で、『至公』とは彼らの間に生まれたわたしの弟だ。
冬美さんは母とは対極の、たいへん料理の上手な人である。
——至公はしばらく見ないうちに大きくなってるんだろうなぁ……
この前実家に帰ったのは、いつだったか。
だが、しかし……
「ごめんなさい。どうせ今週の日曜日も遅くまで仕事だから、夕飯には間に合わないわ。
じゃあ、帰る前には連絡入れるね」
——あぁ、めんどくさいことになった。