さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
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次の日曜日、さすがに二週連続で斎藤を休日出勤(きゅうしゅつ)させるわけにはいかなくて、おかげでわたしは一人午後九時過ぎまで仕事をしていた。

——あぁ、やっぱりこんな時間になっちゃったなぁ……

デスクの上のMacBook Air(PC)をシャットダウンさせて、ほおーっと深いため息を吐く。


それから、PCの脇に置いたiPhone(スマホ)を手にしてFace IDでホーム画面を開くと、Siriに「おとうさんの携帯に電話」と指示をした。

「……あっ、おとうさん?わたしよ、光彩。
今、ようやく仕事が終わったところなの。
これから、そっちへ向かうわ」

通話をしながら、手早くデスクの上を片付ける。


この法律事務所が入居するベリーヒルズビレッジがある港区と、実家の広尾がある渋谷区とは隣接している。

しかも、有栖川公園に面したベリーヒルズビレッジの最寄駅は日比谷線(メトロ)の広尾駅だ。
その駅を挟んで聖◯女子大学の向こう側の住宅街に実家があるため、目と鼻の先と言っていい。

もっと実家からうんと遠く離れた地に住みたいと常々思ってはいるが、何せ激務であるからやっぱり職場の近くが望ましい。
(父の方も同じように考えて、自宅の近くに自らが経営する法律事務所を構えた、というわけなんだけれども……)

加えて「半同居人(ルームメイト)」である茂樹が、港区の元麻布にある富多の御屋敷へいつでもすぐに駆けつけられる場所でないと都合が悪いため、結局は何回引っ越ししようとも同じ港区内になってしまうのだ。


——今からタクシーを拾って行けば十時までには余裕で着くな。

わたしは ル・プリアージュ(バッグ)持ち手(ハンドル)を掴んで立ち上がった。

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