さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜

「ちょっとっ!いつまでも突っ伏してないで、しっかりしなよっ!」

わたしは茂樹を、ゆさゆさと揺さぶった。

「あんたが腹いせに水野さんを煽ったせいで、田中くんがヤンデレ大魔王になって、わたしたち弁護士にとっては聞き捨てならないことをしようとしてるよ⁉︎」


「申し訳ありませんが……光彩さん、茂樹さんを送って行ってもらえませんか?」

今度はわたしに、翔くんから助け舟が出さ(エールが送ら)れた。

「わかったわ……そうした方がいいみたいね」

情けは人のためならず、周り回って自分のところへ(かえ)ってきた。

わたしはル・プリアージュを手に持ち、ハイスツールから立ち上がった。

「茂樹の分も立て替えておくわ。
……お会計(チェック)してちょうだい」

すると、茂樹がむくっと起きて(彼の方も今日は休出だったのだろう)スーツの内ポケットからココマイスターの長財布(ウォレット)を出すと、アメックス(クレカ)を取り出し、無言で翔くんに渡す。

「光彩さんの分もいただきますよ?」

茂樹は肯いたが、まだ眠たそうだ。

「じゃあ……今夜はこれで失礼させてもらうわ。また、ゆっくりと吞みましょう」

わたしは手にしたル・プリアージュを肩にかけると、茂樹のココマイスターのブライドル・バンガーブリーフも持った。

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